朝のアパート窓に映るのは
昨日と同じ私の顔
時計の針だけがなぜか急いで
君のいない時間を埋めようとしてる
コーヒーの匂い二人分の湯気
今は一人で曖昧に消える
テーブルの上のほんの少しの埃
君の痕跡さえ静かに運んでく
降り続く雨は窓を伝い
過去を今にそっと溶かして
「大丈夫だよ」と囁いた君の
声が今も胸の奥で滲む
傘もささずに歩いたあの日
冷たささえぬくもりに変えた
それがどんなに脆い輝きでも
私はあの光を抱きしめる
駅前の本屋並んだ文庫本
君がよく読んでたあの作家の
新しい表紙ふと手に取れば
ページの間に君のメモが舞う
「この話君に似てる」
そんな言葉今は返せない
通り雨の音ぶつかる心の
隙間をそっと撫でてるだけ
降り続く雨は記憶の海
流れるほどに深く澄んでく
「さよなら」さえも言えなかった私
その言葉雨に預けたまま
傘はたたんで歩き出した
ぬれた肩が重たくて
それでも空はいつか晴れるから
私はこの雨を愛おしむ
時計の針はゆっくりと
痛みを優しさに変えていく
君がくれた孤独は冷たくない
むしろこんなにも温かい
降り続く雨がやんだ朝
窓に差す光初めて気づく
君のいない世界も色を持つこと
そっと瞳が教えてくれる
傘もささずに歩いてく
この道がどこへ続いても
あの日々は私の一部だから
雨上がりの空高くあげて
「ありがとう」を今なら言える